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01. 今回出資に至った経緯


三井:倉林さんとは2017年に前のスタートアップで出資のご相談に伺ったことがあり、そこから5年後の再会でした。当時うまくお話できなかったので、人生で一番緊張したピッチでした(笑)。今回、倉林さんにその場で出資したいと言われて、かなり高揚したことを覚えています。今回クロージングに時間がかかってキャッシュが苦しくなった時期には、新田さんの伴走が本当に心の支えになりました。

改めて、今回当社に出資していただいた経緯や、倉林さんの富士通やDNXでのご経験から当社が解決するIoTデータインフラの課題をどのように捉えているのか伺えますか?

倉林:失礼ながら、三井さんに5年前にお断りしたのを忘れており、完全に更地の状態で聞いておりました(笑)。前回失敗してから政策金融公庫の融資を返し切って2回目の挑戦というストーリーを聞いて、起業家として必要な粘り強さを感じました。また、僕は経営者の傾聴力をすごく見ているので、今回のディスカッションを通じてその部分でもとてもいいなと。日本の経営者の方の能力は年々目覚ましく向上していますが、歴史がないので殆どの方は1st time entrepreneurで、かつVCは米国のようにガバナンスが効きにくい中で投資をしないといけない。結果として経営者に投資をするという側面が強い。経営者の伸び代を期待すると「傾聴力」がとても大切だと思っていて、経営者が成長していけないと大きな会社にならないと思っています。今回三井さんとお話した時に、しっかりとお答えになられているし、傾聴力があると感じましたが、5年前は尖っていてそれが感じきれなかったのだと思います(笑)。

三井:めちゃくちゃ尖っていましたね、お恥ずかしいです(笑)

倉林:そう、尖ってた(笑)。「あのときの彼か!」と思い出した時に頭に浮かんだのは、とても自信に満ち溢れていた三井さんの5年前でした。久しぶりにお会いしてみて、バランスが良くなったと感じました。もちろん起業家は尖っているくらいの自信も持っていないといけませんし、人の話を聞いていればいいというものでもないですが、色々な経験を経て成熟されたのかなと感じました。

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あと、長年VCをやってきて、昔の組み込みソフト案件をやっていた立場からすると、この領域はノスタルジック。このレイヤー・このビジネスモデルは懐かしい。昔僕らが2000年前半に投資をしていたときのソフトウェアスタートアップは、マイコンに一つ採用されたら一発で上場、という事業体もいましたが、そのときに近い。今の顧客に組み込まれると大きなビジネスになるという可能性を強く感じました。採用されるとすごいことになるぞ、というアップサイドにグッときています。あと、御社がプロジェクトを進めている東芝テックさんがうちのLPであることも縁だなと思いました。LPも含めて3社で事業が作れていくと面白いなと思っています。

02. データインフラSaaSのポテンシャル


三井:ありがとうございます。このアップサイドについて、ぜひディスカッションさせてください。インターネットの歴史を遡ると、90年代にW3CやIETFにてグローバルインフラが作られ、2010年頃のモバイルクラウドシフトのタイミングで、データインフラを支えるSaaSプレイヤーが登場しました。現在、米国SaaSのうちARR 1,000億円を超えてYoY+50%で成長を続けている企業は5社しかありません。そのうちの4社がデータインフラを支えるHorizontalなSaaS企業です (Snowflake、Datadog、Zscaler、CrowdStrike)。

インターネットに繋がっているCPUに目を向けると、今後10年でインターネットに接続するデバイスの約95%がIoTデバイスになり、これはモバイルシフトのときよりも大きな変化の波です。このIoT機器とクラウドをつなぐデータインフラ周りにはまだ未整備なチャレンジが多く残っていて、僕らはここを支えるデータインフラを展開しています。SaaSモデルについてはまだまだ勉強中なので、B2B SaaSのプロの投資家の視点から、HorizontalなSaaS事業やデータインフラ領域をどう捉えているのかお伺いしたいです。